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~研究意義~
教育の現状
日本の子どもの学力は国際的にみて上位。それは以下のPISAの得点推移を見ても明らかである。
しかし、全項目の中で読解力が低下傾向にある。また、全国の調査からも学ぶ意欲や学習習慣が必ずしも十分ではない。学力調査による分析からの改善策提案までに至ることも不十分である。
以前の調査から小中学生の規範意識が米国や中国と比べて低いことが明らかである。
例)掃除当番などをさぼる人が多い。
自然体験をすることが昔と比べて減少している。
自然体験を多く経験した青少年の中には、道徳観・正義感のある青少年が多いという調査結果がある。
読書活動の少なさが読解力の低下や活字離れを促進させてしまっている。(体力の低下)
理科や数学の勉強が楽しいという生徒の割合は国際的に見て最低レベルで、学年が高くなるにつれて理数科目が嫌いになる傾向が強くなる。
グローバル化や少子高齢化に伴い、変化の激しい先行きが不透明な社会へと移行している。その際に必要となってくるものが、幅広い知識と柔軟な思考力に基づいて、知識を活用し、付加価値を生み、イノベーションや新たな社会を創造していく人材や国際的な視野を持ち、個人や社会の多様性を尊重しつつ、他者と協働して課題解決を行う人材が求められている。
また、研究地に尼崎市を選んだのは図のように全国と比べて学力が低い現状があるからである。
~これまでの研究~
これまで、子ども班では主に中学生を対象にした研究活動を行ってきました。
研究活動の成果として毎年「論文執筆」を行っています。
現状に抱えている問題を“経済学”の視点からデータを用いて分析をし、
政策の提言を掲げてきました。
そんな私たちの研究の軌跡を少しご覧いただければと思います。
2019年
2019年より、私たちの研究は始まりました。
『尼崎公立中学校における、
学習環境が非認知能力と計算能力に与える影響』
~兵庫県公立中学校の例を用いて~
初めての研究ということで不透明なところもありましたが、そのような中、何とか論文を書き上げることが出来ました。タイトルにある通り、非認知能力と計算能力に与える要因として学習環境が大きく寄与しているのではないか、という仮説を検証した論文です。
非認知能力という言葉はご存知でしょうか。
非認知能力とは学力などとは異なり、
“主体性・他者と関わる力などの数字やデータで表すことができない能力”とされています。
私たちの実証分析の結果、家庭環境が非認知能力に影響を与え、その非認知能力が計算能力にまでプラスの影響を与えることが明らかになりました。
一見すると、「当たり前」と思われるかもしれません。
しかし、その「当たり前」が数字で分かることに意味があると思っています。
2019年度 ISFJ日本学生政策会議 分科会賞受賞
2020年
『中学校のコロナ禍で受けるストレスが
進路決定自己効力感に与える影響』
2019年度に引き続き、2020年度も研究論文を執筆しました。
2020年の1月から始まった新型コロナウイルスの蔓延。
コロナの影響が中学生にどのような精神的影響を与えてしまうのか、についてデータを用いて検証しました。そして、“そのコロナによるストレスが、中学生が待ち受ける進路決定の場面において負の影響を与えてしまうのではないか?”という仮説を検証しました。
もちろん、ストレスへの要因はコロナだけにとどまりません。
日常に受けるストレスの要因はさまざまです。部活動、友人関係…など多岐に渡ります。私たちはそれらの要因を可能な限り抽出し、データ化して分析を行いました。また、ストレスを軽減させる強さとしてレジリエンスという概念にも着目して新型コロナウイルスの純粋な影響に目を向けました。
2020年度 WEST論文研究発表会 分科会賞受賞
2021年
アクティブラーニンクの授業形態の差が
中学生の進路決定自己効力感に与える影響
~差の差分析を用いた実証介入実験~
2020年度に引き続き2021年度の研究論文でも、中学生の進路決定に着目しました。
その中でも特に、教育の現場でこれまで議論されてきた「アクティブラーニング」に焦点を当てています。グローバル化や情報化、少子高齢化など近年の急激な社会の変化に合わせ、各学校段階の教育を適切に具現化できる教育課程の検討がなされており、「学びに向かう力・人間性等」・「知識・技能」・「思考力・判断力・表現力等」に代表されるような、社会と連携・協働した教育活動 の充実がますます求められています。
しかし中学生は青年前期に位置し、自意識と客観的事実との違いに悩み、様々な葛藤 の中で、自らの生き方を模索しはじめる時期であるため、青年前期は他者との関わりが自己発 達に大きな影響を与えていると言われており、多感な時期である中学生にとってどのよう な学びをしたかは将来に対して重要な基盤となります。
そこで私たちは中等教育において重要な学びの方法論としてアクティブラーニングに着目し、
“アクテ ィブラーニングの授業形態の差が中学生の進路決定自己効力感に正の影響を与える”という検証仮説を立てました。
実際に尼崎市公立中学校の皆様にご協力いただいて、講義型・グループワーク型・PBL(問題解決型)の3つの授業形態に分けて私たちが授業させていただき、その授業形態の差による影響を明らかにしました。
分析の結果、PBL 型クラスが進路決定自己効力感 に正の影響を与えることが明らかになりました。
2022年
性格特性等の非認知能力が中学生の進路選択に与える影響
~3期間のパネルデータを用いて~
2021年度に引き続き2022年度の研究論文でも、中学生の進路決定に着目しました。
その中でも特に、非認知能力に大きく焦点を当てて執筆した論文です。
非認知能力とは、“主体性・他者と関わる力などの数字やデータで表すことができない能力”を意味します。
その非認知能力の中にもたくさんの能力があり、本論文では性格特性を5つの因子で表したBIG5、
そして“進路選択や決定を行う過程で必要な行動に対する遂行可能感”である、 進路決定自己効力感の2つの非認知能力に着目しています。進路決定自己効力感は関係性の中で形成されていくもので、その発達は中学生の時期にほとんど安定すると言われています。
また、本論文では3期間にわたるパネルデータを使用した分析を行っています。
パネルデータとは時系列データとクロスセクションデータを合わせたもので、ここでは、公立中学校の1年生が3年生になるまで毎年同じ質問に回答していただいたデータを指します。日本の公立中学生を対象にしたパネルデータはとても貴重なものであり、パネルデータを用いた分析は観測不能は経済主体間の違いを固定効果として抽出することができるため、分析の質も格段と上がることが知られています。
分析の結果、性格特性を測る指標であるBIG5の外向性・進路決定自己効力感・大学進学ダミーが正に有意な結果となりました。
2022年度 WEST論文研究発表会 分科会賞受賞
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