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10月書籍【子どもの心を豊かに育てるために】

子どもの心を豊かに育てるために(2008) 大野要子 明治図書出版株式会社


<要約>

 学校が力を入れなければならないことは何か。それは、信頼関係に結ばれた集団の中で、それぞれの人権を尊重し合い、互いに思いやり合って、規範意識と尽くす心を育て、社会に貢献できる「豊かな心」をもった人間を育てていくことである。それを達成するために重要なことが、道徳の時間をいかに有効に使うかである。本書では、著者が教員であった頃の実体験をもとに、いろいろな家庭の条件を背負った多様な子どもたち一人一人に豊かな心をどのように育てたのかが、計6章にわけて述べられている。第1章では、肝心な「豊かな心」とは何かについて述べており、第2章ではそれを育てるための要件とは何かについて具体的な案とともに示している。豊かな心を育てるためには、学級集団が大きな役割を果たしている。学力だけを育成しても集団の中で役立つ人間にはなれない。他人と強調し他人を思いやる心、たくましく生きる力が子どもの中で統合されて、よりよい道徳性・社会性が形成されそれにより人格が形成されるからである。第3章から第6章では、自制心・共感する力・推察力・コミュニケーション能力という4つの大切な力について、道徳の時間を使ってどのように育成していくか、指導のポイントなども交えて述べられている。コミュニケーション能力を高めることは、豊かな心を高まらせることにもつながる。道徳の時間や学級集団を通して、どう伝えたら相手が理解するのか、そのようなことも含めて伝え合う力を伸ばしていく必要がある。


<感想> 

 教育現場に求められていることは、学力の向上だけではないということを強く感じた。本書は12年前のものだが、現在の教育現場にも当てはまる重要な文献だと考える。本書のキーワードである「豊かな心」、どれぐらいの人が持っているだろうか。「豊かな心」を定義することは難しいが、おそらく多くの人が十分には持っていないだろう。学校で重視される学力は、後から必死になればある程度伸ばすことが可能である。だが、「豊かな心」は幼少期から育てておく必要があり、後から必死なっても急に育つわけではない。とすると、学校が子どもたちに何を優先して教えるのか、見直す必要があると感じた。本書は著者自身が教育現場の最前線にいた経験をもとに書かれているため、内容には大変な説得力がある。また、著者が実践していたことが具体的に示されているため、普段は知ることのできない先生の頭の中を見ているようで、大変面白く読み進めることができた。本書では教育現場で「豊かな心」を育てるということについて述べられているが、私たちはそこにどのように関与できるだろかと考えさせられた。なぜなら、日本社会の未来には「豊かな心」を持った子どもたちの存在が欠かすことができないからだ。




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