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12月日本語論文【子どもと絵本】

松村 敦・森 円花・宇陀 則彦「絵本の読み聞かせ時の演じ分けが子どもの物語理解と物語の印象に与える影響」日本教育工学会論文誌 39(Suppl.),125-128,2015


<要約>

本研究では、絵本の読み聞かせをするときに絵本を読み聞かせをする者が演じ分けをするか否かで子どもに対して影響に差がでるのかというのを本論文では、特に「物語理解」と「物語の印象」に焦点を当てて研究を進めている。この演じ分けをして読み聞かせをすることには、本研究の前にいくつか議論がある。演じ分けに肯定的な意見では、表情を豊かに読むことでより理解度が深まると主張するもの(上条 2009)や、「お話自体がおもしろいのですから、演じて読む必要はありません」と主張するもの(東京都立多摩図書館 2012)などがあったが、今回は前者の肯定的な意見を採用し、議論を進めている。研究をするにあたって実験を行ったが、その研究方法は、5歳児と6歳児に対して録音された音声を使って(実験ごとに読み聞かせに差が生まれないようにするためである)その音声にしたがってページをめくりながら、読み聞かせをすすめる。その後、質問紙には物語の理解度を図る「全員で遊んだあと何をしましたか」や登場人物の心情を図る「おもちを食べたとき、Aくんはどう思いましたか」などの質問が記載されており、子どもがどう感じたのかを実験している。結果は、物語理解度に関しては、演じ分けをしたかどうかにかかわらずほとんど変化がなかった。たいして、登場人物の心情に関しては、演じ分けをしたグループの方が演じ分けをしなかったグループよりも、心情の理解度が低くなる傾向がみられた。

<感想>

まず、一番驚いたのはやはり実験結果でした。演じ分けをして、感情をこもらせる方が子どもの心情理解を阻害してしまうというのには驚きです。初めは何かの間違いではないかと思い、演じ分けをした方が感情が直接的に子どもの心に響いてより物語の理解度も心情理解も深まるものと思っていました。しかし、この結果は読み聞かせをした人の感情によって左右するのではないかと思います。読み聞かせをする人が怒った様子で読み聞かせるとその子どもは「あ、この子(登場人物)は怒っているんだな」と理解するはずです。この論文において、心情理解度が低いというのは、本来その絵本で描かれている心情、いわゆる「正解の心情」についての理解度が低いということを指すと考えます。そう考えると、この研究結果は特に悲観するべきものではないと考えられます。なぜなら、絵本には必ず解釈がいつも一致するとは限らないからです。また、この結果から私は、「読み聞かせ者の感情が子どもの心情に与える影響は大きい」ということが分かり、いかに他者の影響を子どもは敏感に察知しているかということが分かりました。


今回の日本語論文では「絵本」という私たちの普段の活動ではあまり馴染みのないテーマでしたが、これは5歳児、6歳児だけの話ではないのではないかと思います。私たちが普段行かせていただいている「中学生」の年代にも関係していると考えます。近年、日本だけでなく世界中で言われている「非認知能力」ですが、他者の感情を的確に読み取って相手を理解する「対話」の力が非認知能力には必要です。その対話をしていく中で、相手の話し方を感情で受け取り、理解する。この能力は絵本の読み聞かせ(演じ分けあり)や、ごっこ遊び、(中学生ができることといえば)劇を演じるなど、絵本だけに限らず、できることはたくさんあります。今回は絵本を切り口とした論文でしたが、これは私たちの活動に影響を与えるものになりました。非認知能力を高めるには文字情報だけでなく、絵本にみられるような「絵」や「感情」も必要だということが改めて認識でき、大変参考になりました。

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