2月書籍【教育と経済発展】
大塚啓次郎 黒崎卓(2003)『教育と経済発展』
【要約】
本著では教育を投資することでいかに経済発展に結び付くか、について計量的な分析を用いながら論じている。本著が対象とするのは途上国の教育であり、どうすれば子どもに教育を効果的に享受させ長期的に経済を発展させるのか。まず、子どもに適切な教育を受けさせるためには、教育供給よりも教育需要を増加させるべきである。いくら教育についての設備が整っていてもそれらを活用していこうという気持ちがなければ子どもに教育は行き届かないだろう。さらに、教育の種類についても述べている。それは「実業教育」と「普通教育」の2つである。実業教育は、職業に直結する教育のことで、普通教育は普遍的に通用する教育である。この2つの教育はどちらが良いのかというのはこれまでの歴史的な流れの中で変わってきた。かつて工業化していた日本では仕事に直結する実業教育が必要とされてきたが、近年のグローバル化においてどんな困難にも立ち向かえる普通教育の重要性が増してきた。それは先進国のみならず途上国においても実業教育が重視されてきた。途上国においても、目まぐるしく変化する社会に対応していくために普通教育が必要なのだろう。このような教育を届けるにはさまざまな研究の蓄積の上に需要を増加させなければいけない。そうして経済発展が促され、貧困の削減に向かっていくのである。
【感想】
今回の書籍では途上国における教育というテーマで、初めは子ども班とは関係のないものだと思いました。しかし、自分たちがこれまで活動していることの最終的な「意味」のようなものを考えると自分たちの活動は経済にとって有益なものなのか、考えさせられる書籍でした。扱う場所は違えど、先進国も途上国も教育に対する注目度はほとんど変わりません。今の日本でも、親の教育に関する関心度などは子どもの教育に影響を与えますし、初等教育などにおける学校教育の充実は子どもの将来的な能力(本著では言及されていませんが、子ども班で注目している「非認知能力」なども含むと考えます)を向上させることは今も変わりません。しかし、本著でも言及していたように、なかなか教育がどう経済に貢献したかということを明確に視覚化できないことはまだまだこれからの課題で、本著の研究でも「将来の賃金」によってでしか、教育の効果を測定できていません。それは私たち子ども班の活動や論文においても、この困難さをどう克服するかはこれからの課題といえるかもしれません。
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