5月日本語論文【子ども期の貧困が成人後の生活困難(デプリベーション)に与える影響の分析】
阿部彩. (2011). 子ども期の貧困が成人後の生活困難 (デプリベーション) に与える影響の分析. 季刊社会保障研究, 46(4), 354-367.
【要約】
この論文では、子ども期の貧困が成人になった後の生活水準に影響を与えているのかを検証している。子ども期の貧困が社会全体の貧困問題とつながると考えるのは、子ども期の貧困が将来に渡って持続していくものだと捉えられているからだ。この論文では大きく分けて3つの疑問について検証を行なっている。まず1つ目が子ども期の貧困が将来のステージに渡って持続するのかということである。また、その疑問について実証的な分析を用いて行なっている。2つ目が子ども期の貧困が成人後の貧困につながる経路は何かということである。その有力なものとされているのが教育(学歴)である。しかし、現在までの研究で学歴のみが貧困継続の原因とされていない可能性があることも示唆されている。3つ目が子ども期の貧困による影響がコホートによって異なるのかということである。これは若年世代と高齢世代を比べて検証している。この研究では、過去の貧困状況などと現在の貧困や家族状況などを聞いたデータから、個人のパネルデータを作成し、分析を行う。さらに、これまでの研究から子ども期の貧困が現在の困窮状況に有意に働いていることが分かっている。そして、他の研究では子ども期の貧困が学歴を通すことなく、現在の生活の幸福感に影響を与えていることが分かっている。この研究では国立社会保障・人口問題研究所による「社会保障実態調査」をデータとして用いている。子ども期に生活困難を経験した人のその後を追ってみると、結婚や子どもの誕生によって、大変苦しいから脱出していることが見て取れる。これは大多数のデータで見られた。しかし、このデータは69歳までを対象としているので、その後の高齢期の変遷については観察できない。この分析では20〜49歳の若者期と50〜69歳の高齢期、若年期期と高齢期のコホート比較の3つのモデルを用いている。ただし、コホート比較に用いる若年期は20〜39歳、高齢期は50〜69歳を用いる。子ども期の貧困は低学歴や低所得に有意に影響を与えているということが明らかとなった。また、食料や衣服の困窮度合いにも影響を与えた。高齢期に関しては、独立→就職→結婚→育児といった標準的ライフコースを逸脱している人ほど、現在の低所得へとつながっているという結果が得られている。コホート比較をした結果では、若者世代の方が子ども期の貧困が影響する度合いが大きいことが分かった。以上より、子ども期の貧困による影響があるものは一般にイメージされる低所得、低学歴、非正規雇用であったが、それ以外のものへの直接的な影響もあった。また、高齢世代が若者世代よりも影響を示す係数が低かったことの理由は定かではないが、若者が子ども期の貧困による影響が大きいという結果から何か子ども期への対応が必要だと考えられる。
【感想】
子ども期に貧困に陥ることが将来にわたって貧困を持続させてしまうという結果が得られた。このことは私にとって比較的に容易に推測できた。なぜなら、貧困は世代間を通じて持続していくからである。この論文のように子ども期に貧困に陥ってしまうと、塾に通えなくなってしまう問題が発生するように感じた。この塾というものは現在の日本の教育課程において、重要な役割を果たしており、そこに通うことのできない生徒はく他の生徒との学力においての差が大きく生じてしまいます。そのような点を緩和させることができるのが私たちの活動であり、その結果、子どもたちの将来の生活が貧困から脱却することにつながるのではないかと思います。
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