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6月日本語論文【マンガの読解力と文章の読解力の関係性】

大久保紀一朗, 和田裕一, 窪俊一, & 堀田龍也. (2018). マンガの読解力と文章の読解力の関係性. 教育メディア研究, 25(1), 19-35.


【要約】

本研究は,マンガを読むことに対するに固有の読解力や,文章を読むことと共通する読解力の内実を明らかにするために,マンガの読解力と文章の読解力の関係性について検討することを目的とした。マンガの読解力および文章の読解力の測定にあたっては,マンガと文章それぞれについて,van Dijk & Kintsch(1983)の文章理解モデルにおける3つのレベルの表象(表層レベル・テキストベース・状況モデル)を反映する設問からなる理解度テストを実施し,得点間の媒介分析ならびに相関分析を行った。その結果,マンガと文章の「表層レベル」に関する問題の得点はテキストベースに関する問題の得点を媒介して,「状況モデル」に関する問題の得点に影響していることが示され,マンガの読解においてもvan Dijk & Kintsch(1983)の文章理解モデルが適用できることが示唆された。また,マンガと文章の読解力の関連性に関して,表層レベルの理解では異なる認知能力が寄与している一方,テキストベースや状況モデルの読解では共通する認知能力が寄与していることが示唆された。本研究で得られた知見を踏まえ,マンガの読解と文章の読解の共通点や相違点について議論した。マンガの読解における認知処理能力に関しては,実証的な研究はきわめて少ないものの,コマや吹き出し,効果線等のマンガ特有の記号情報に関する読解力や,マンガに対する習熟度とマンガの読解力との関係に着目した関連研究がいくつか報告されている。


【感想】

この論文を読んで驚きの連続でした。マンガの力をこのような形で実証分析をしている研究があることそのものが驚きです。しかも、この研究では多少の差はあるものの、文章読解とマンガ読解の間に大きな読解力の差が見られないという、私たちの対象である「中学生」にとっては嬉しい気持ちでいっぱいなのではないかと思います。もちろん国語的な能力(文脈把握能力や語彙力)は文章読解の方が効率がいいのかもしれません。しかし、マンガ読解には状況を把握する能力や感受性などが文章読解よりも効率がいいのかなとも個人的に感じています。とはいえ、マンガばかりを読むのは文章からしか得られないものを得られない、というデメリットもあります。私は、マンガも文章もどちらも読解力の向上には意味があるということを言いたいです。マンガを読むことに対して抑圧的になってはいけないと思います。どちらも同等の価値があると思っています。

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