7月日本語論文【中学生の親および親友 との信頼関係と学校適応】
酒井厚, 菅原ますみ, 眞榮城和美, 菅原健介, & 北村俊則. (2002). 中学生の親および親友との信頼関係と学校適応. 教育心理学研究, 50(1), 12-22.
〈要約〉
本論文では、中学生期にある子どもにとって重要な他者であると考えられる親および親友との信頼関係を取り上げ、学校での反社会的な行動や孤立などの不適応的傾向との関連について検討することを目的として実施された。学校適応は、教室にいるときの気分(反抗的・不安・リラックス)と学校での不適応傾向(孤立傾向・反社会的傾向)について測定している。調査対象は縦断研究に登録されている中学生270名(平均13.7歳)とその両親(母:279名、父:241名) とし、調査より以下の結果が得られた。まず親子相互の信頼感において、子どもの学校適応に影響を与えているのは子が親に抱く信頼感の方であり、親が子に抱く信頼感は関連が見られなかった。また、子が親に抱く信頼感に関しては、母親に対するものばかりではなく父親に対する信頼感も学校適応に重要 な役割を担うことが示唆された。次に、親子間相互の信頼感得点の高低から分類した親子の信頼関係タイプによる結果では、総じて親子相互信頼群の子どもの学校適応がほぼ良好であるのに対し、親子相互不信群の子どもは学校に不適応な傾向が示された。最後に、親友との信頼関係が学校適応に与える影響に関しては、学校で不適応な傾向にある親子相互不信群において特徴が見られ、「孤立傾向」や「リラックスした気分」の変数では学校への適応を良くする防御要因として働く一方で、「反社会的傾向」の得点はより高めてしまうという促進要因ともなりうることが示された。
〈感想〉
親子間の信頼関係が学校適応に影響を与えるというのは、ある程度自明のことのように思えるが、それが母親だけでなく父親との間でも成り立つというのは意外であった。中学生というと、思春期が重なることなどもあり、親との関係性特に父親においては少し遠くなりがちであるが、とはいえ相互の信頼感が学校適応に与える影響が大きいというのは、やはりまだまだ活動範囲の狭い中学生にとって一番身近な家族の存在は大きいものであることを改めて考えさせられた。また、親友との信頼関係においてはプラスの作用だけではなく、反社会的傾向に向いてしまう恐れもあるということは、意外ではあったが納得した。そんな周囲の人の影響を受けやすい多感な中学生たちと関わらせてもらう立場として、私たちも少なからず影響を与えることになる。私たちとの関りが学校適応にプラスとなるよう一人一人とのかかわり方というものを常に考え、活動していきたいと思った。
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