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【2月 書籍】チャイルド・プア~社会を蝕む子どもの貧困~

新井直之(2014)ティー・オーエンタテインメント


<要約>

 本書は2012年10月19日に放送したNHK総合の特報首都圏「チャイルド・プア~急増 苦しむ子どもたち~」という番組を書籍化したものだ。経済的に困窮している家庭の親の多くは、苦しいことを世間に訴えるどころか、昨今の生活保護バッシングのような世間からの厳しい批判を恐れて「助けて」とさえ言えない。悲しいことに、子どもの貧困を世間から見えにくくすることに無意識に加担してしまっている。貧困の家庭で、様々な不利を背負って成長した子どもは学力不足や低学歴によって大人になってからも安定した職業に就けず、貧困から抜け出せないことが多い。貧困の連鎖が驚くようなスピードで進んでいる。若者が活力を失った社会はもろい。社会保障にかかる費用も増大する。その代償を払うのは、ほかでもない私たちだ。子どもの貧困は社会を蝕む。深刻さを増す子どもの貧困に対して国も動き始めた。2013年6月には国会で子どもの貧困対策法が成立。2014年1月に施行された。


<感想>

 読んでいて苦しくなった。だが、本書で述べられていることが現実に起きていて、見過ごすわけにはいかない深刻な問題であることは誰もが認めざるおえない。子どもの貧困はなかなか世間には届きにくい。経済的に困窮している家庭の親が「助けて」ということを寛大な姿勢で受け止めることのできない日本社会は、言葉はきれいでないが、やばいなと改めて思う。貧しいことが悪いこと、恥ずかしいこと、という空気が現在の日本社会を覆っている感覚がある。栗田研究室の専攻である開発経済学で貧困の連鎖というワードが登場する機会がある。この話は他国だけでなく、日本でも起きている大きな課題である。学力不足や低学歴が子どものキャリア形成に多大な影響を及ぼすことは容易に想像がつくだろう。まずは、経済的に困窮している家庭の親やその子どもたちが安心して、生活の現状や胸の内を明かすことができる環境づくりを早急に構築するべきだと考える。



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