7月書籍【ネガティブ・ケイパビリティ】
更新日:2020年8月16日
帚木蓬生『ネガティブ・ケイパビリティ 答えの出ない事態に耐える力』
【要約】
ネガティブ・ケイパビリティは英語で“negative capability”、日本語では「負の能力」「陰性能力」といい、「どうにも答えの出ない、どうにも対処しようのない事態に耐える能力」を指す。あるいは、「性急に証明や理由を求めずに、不確実さや不思議さ、懐疑の中にいることができる能力」を意味する。これは教育の場でも大変重要な概念である。なぜなら、教育においてネガティブ・ケイパビリティとは反対の、「ポジティブ・ケイパビリティ」を求める風潮があまりにも跋扈しているからである。中学では、漢字や計算をベースに複数の科目を学習し、覚えることが大変多い。それに加えて、中間・期末・実力テストなどの節目節目に記憶したものを素早く吐き出す訓練をしている。高校では普通学校では、受験に向けての知識の詰め込みに尽きる。ここでは教育は分かっている事柄を一方的に伝授することであり、問題の設定とそれに対する解答をいかに素早くこなすか、に全力を注いでいるように感じる。教育とは本来、知らないことを知っていくという探求の道であるにもかかわらず、これでは真に教育という面でいささか問題があるように思える。ポジティブ・ケイパビリティのように、即決に問題を解決する能力は人生のほんの一部でしか役に立たない。なぜならもうすでにこの世はすぐに解決できない問題の方が多いからである。
【感想】
この本のネガティブ・ケイパビリティは子ども班の活動でかなり根幹の部分にリンクしていると感じました。私たちが子どもたちにできるのは、もちろん勉強を教えることなのですが、それだと塾の先生となんら変わりはありません。私たちは子どもの「可能性を広げる」ためには勉強という指標だけで広げようとするのではなく、勉強だけが人生を左右するのではなく、それ以外の能力にも目を向けていく必要があると思います。今後の出張授業でも、数学の知識や経済学の知識を伝達するという意識ではなく、もっと深く考えさせて答えを早急に求めさせない工夫も(50分授業の中で時間が許す限りですが)取り入れていこうと思います。また、大学見学ツアーでも大学に感じる感受性などを鍛える工夫も新たに加えていけば子ども班の理念に近づくのではないかと思っています。
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