11月書籍【オンライン教育の課題】
月刊先端教育2020 6月号
「オンライン教育の課題と展望
格差のない新たな学びのモデル構築へ」
学校法人先端教育機構(編集)
※「オンライン教育特集」のうち、総論となる本記事を要約した
(要約)
新型コロナウイルス感染症拡大に伴い、教育の現場では休講措置を余儀なくされるなど、大きな影響を受けた。そんな中、各方面から注目を集めたのががICTを活用したオンライン教育である。単に従来行われてきた対面での学びを代替するだけでなく、さらに質の高い学習を可能にするとの期待も高まっている。しかし、オンライン教育には注目すべき課題も存在しており、この記事では「ハード」、「ソフト」、「ヒューマン」、「制度・政策」の観点から課題と展望を整理している。
・ハード - オンライン教育を行うためにはインターネット環境と、PCやタブレットなどの端末である。スマートフォンが普及した現代においても、誰もがICT環境に当たり前にアクセスできるわけではない。この状況のままオンライン教育を進めることは、教育格差の助長となってしまう。日本では既に、生徒一人につき一台タブレット端末を支給する動きをコロナ以前から緩やかに進めてきたが、当初計画していたスケジュールにとらわれず民間企業とも連携しながら迅速にインフラ整備を進めることが必要となる。
・ソフト - 対面での情報伝達と比較すると、オンラインでは非言語的なコミュニケーションがしづらくなり、グループワークの実施や参加者の緊張感やモチベーションの維持が難しい。このようなデメリットを理解した上で、改善策を検証しながら質の向上をしていかなければならない。
・ヒューマン - ICTを活用した教育は、最近始まった動きではなく、以前から進められてきた。その中で教員がICTを活用できない(活用できる教員が少ない)という人材の問題が顕著となっている。仮にICT教育を行う環境が整い、そしてその内容・カリキュラムが確立されたとしても、そのための知識やスキルを兼ね備えた人材無くしては質の高い教育は行えない。この人材の育成・確保は急務となっている。
・制度・政策 - 上記三要素の問題を改善していくためには、制度・政策的な後押しが必要である。ハード整備のための予算確保、ソフト面に関しては学習指導要領などの見直し、人材確保のための採用・研修システムの再設計などである。2020年4月7日に閣議決定された「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策」においても「遠隔教育について実施すべき事項」として上記のような施策を推進することの重要性が謳われている。
(感想)
この雑誌はいくつものコラムから構成されているため、要約はその一記事にとどまる、それ以外の記事にも触れながら感想を述べていきたい。まず全体として、子ども班で関わらせていただいている中学生はもちろんであるが、自分自身が現在受けている大学教育とも非常に関連深いものであった。現在在籍している関西学院大学も2020年度春学期から授業を基本的にオンラインに切り替え、現在に至るまでその状況は続いている。要約で上がっていたような問題は私が今年度の授業の中でまさに感じていたものばかりであった。総論の次の記事で、熊本大学教授システム学研究センター長の鈴木克明教授が「オンライン教育設計の7か条」というものをあげており、それらは対面でできたことを全てオンラインで代替するのではなく、無理をせず補う趣旨のもので、大変興味深かった。また、東進ハイスクール講師安河内哲也さんの記事では、東進がどのようにして現在のオンデマンド型スタイルを確立したのかについて記されている。カギは受講内容がきちんと身についているかを確認するテストや、後日同期型オンラインで、生徒が授業内でわからなかったことを解決すること、また講師がオンデマンド用に授業の構成や表現を考えることにあるようだ。
全体を通して、オンラインとオフラインの2極端で考えないことが肝要であると感じた。双方メリットとデメリットがあるのであれば、互いに補うような折衷型で質の高い教育をこれを機に目指していくことが必要なのではないだろうか。
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