2月日本語論文【天文学習を支援するデジタル教材の作成と教育的有効性の評価】
社会法人 情報処理学会 研究報告
IPSJ SIG Technical Report
上田晴彦 秋田大学教育文化学部
【要旨】
小中学校の各教科において、デジタル教材の積極的な活用をどのように進めていくかは、重要な課題である。ところが、近年のコンピュータ環境の整備・充実にもかかわらず、各教科におけるデジタル教材の活用はまだ十分ではない。その理由の一つとしてデジタル教材を用いた授業の有効性の研究、つまりどのようなタイプの児童・生徒にデジタル教材がより効果的であるのかという調査研究が不足していることが考えられる。そこで本研究では中学生の天文学習を支援するデジタル教材を作成し、その教育的効果を調べている。特に星・太陽の動きに関するプラネタリウム型デジタル教材を作成し、秋田県内の2つの中学校において教育実践を行った。本研究の結果は今回作成されたデジタル教材に対してのことであり、また二校間の調査結果にも差があることから一概に言える話ではない。しかし、その中でも興味深い事実として、理科が得意でないと答えている受講者に、デジタル教材の効果がないと答えたものが両校とも全くいなかったことである。この結果から、その教科がより不得意と感じている受講者にデジタル教材ははっきりとした効果があることを突き止められた。今回の結果を踏まえたデジタル教材の今後の展望としては、現在公開されている「素材型」ではなく「学習型」が望ましい。なお、デジタル教材の開発にはかなりの時間を要するため、各県にある教育センターや教員養成学部での組織的な開発が必要になると考えられる。
【感想】
この論文は2011年にかかれたものであるが、私たちが日ごろ教育支援を行っている中学校においてもプロジェクターこそ設置されたものの、デジタル要素を活かされた授業はいまだあまり見受けられない。また、私たちが実際に尼っこプロジェクトとしてプロジェクターを使用し、授業を行った際も機械トラブルが起きてしまったということもあり、時は立ったが、本稿内で述べられているデジタル教育の課題点はまだ改善されていないというのが、正直なところなのではないかと考えられる。しかし、研究結果から明らかになっているようにその教科に対し、苦手意識を持っている子どもにとってデジタル教材による授業は効果があるということが明らかとなったことから、デジタル学習は成績のボトムアップにつながるのではないかと考えた。また、今回使用されていたようなデジタル教材は小学校高学年から中学生にかけては具体的なものから抽象的なものへ理解が進む年代であるといわれており、中学生に対して抽象的な理解を助けるビジュアルなデジタル教育は力を発揮されるということが分かった。いずれにしてもこの研究結果は、2校におけるのみのものであるので実際に我々が対象としている学校においても同様の研究を行ってみても面白いのではないかと考えた。こうした研究を踏まえて、教育現場におけるITの導入について検証してみたいと思う。
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