2021年 7月 参考文献

英語論文：「Marginality and vulnerability: Why the homeless of Tokyo don't ‘count’ in disaster preparations」

著者：Ben　Wisner

雑誌名：Applied Geography　Volume 18, Issue 1, Pages 25-33(1998)

要約：都市災害の脆弱性分析の哲学的・方法論的基盤は、現在のところ未発達の状態である。今までの都市災害に関する分析には、社会的データを取り入れたものがはほとんど存在していなかった。

　これは、都市の防災担当者やその他の潜在的な利用者グループがこの情報の価値を十分に理解していないことが原因である。また、既存の脆弱性分析に社会的データを含めるための技術が確立されていないことが原因である。

　この論文では、まず初めに日本の地震の影響に関するモデルに社会的余白に関するデータを追加する。そして、災害計画プロセスに社会的余白のあるグループを組み込むことの価値を探っている。

　東京で拡大しているホームレスの現象をテストケースとして使用している。ホームレスに関するデータは、個人的・社会的な保護を強化するために設計されたシステムの性能を向上させるものである。また、この論文では都市部の限界的なグループを組み込むことで、対処メカニズムに関する新たな知識を得て、計画プロセス全体を豊かにすることができると論じている。都市災害は、地方と比較すると被害が増大する。そのため、人の集まるところであれば、対策がより重要になってくる。

日本語論文：「外国人観光客を対象とした防災知識提供システムにおける情報提示手法」

著者：志垣 沙灯子　吉野 孝

雑誌名：情報処理学会論文誌204 - 213(2021)

要約：日本は観光大国になりつつあり，訪日外国人観光客数は年々増加している状態である。その一方で，日本は地震や台風といった自然災害が多い国である。外国人観光客は日本で災害に遭遇した際に，何が起きたかを理解できない可能性が高く、日本語が分からない外国人の場合には、情報入手も困難である。この論文では、外国人観光客に自発的に使ってもらえる防災知識提供システムを開発し、情報提示手法について検討している。最初のアプローチでは，正解・不正解のある二択クイズを用いた。

しかし、災害時の行動には必ずしも正解とはならない場合があり、自分で適切な行動を考えなければならない状況が起こる。そのため、正解のない二択クイズを用いた情報提示手法を提案した。

さらに、外国人観光客は，訪問先の観光地で遭遇する可能性のある災害に関する防災知識を知っておく必要があるので、観光地の立地に応じた防災知識を提供する情報提示手法を提案した。この論文では，各情報提示手法の概要と有用性検証実験について述べ，提案手法が一定の効果を示したことを示している。

観光地の立地に応じた防災知識を提供し，正解・不正解がある防災知識においては「●✕クイズ」を行い、「クイズは楽しめるか」と「システムの利用は災害時の行動を考えさせるか」の 2 項目から考察を行った。

適切な行動を自分で考える必要がある場合には「はてなクイズ」を出題し、「私は，クイズが出題されるのは楽しかった」と「私は，システムを利用して，災害発生時にどのように行動すればいいのかを考えた」の２項目から考察を行った。

　外国人観光客は、災害の際に言語の壁が存在するために、避難に遅れる可能性が高い。災害の際には、アプリを活用した情報提供は非常に効果的であると感じた。その中でどのような情報提供の仕方が有効か改めて考える必要があると感じた。

日本語書籍：「東京くらし防災」

出版社名：東京都総務局総合防災部防災管理課

要約：東京都は「東京防災」の女性視点の防災ブックとして「東京くらし防災」を発行した。災害に関して女性目線というのは、抜けがちな視点である。住民は避難することに必死であるために、女性の立場をわきまえるのは非常に難しい状況である。実際に、避難所生活において女性が苦しい思いをする事例が多く存在している。

　本書ではには、いつもの暮らしに焦点を当てながら、日常生活のちょっとした工夫でできる防災対策や避難生活での様々な課題への対処法などを掲載しています。暮らしの中でのちょっとした工夫が防災に繋がります。“いつもの暮らし”を見直して、もしものときに備えることができる。

　防災は、普段からの取り組みが非常に重要である。少しの意識で、被害を大きく削減することが可能である。本書を読むことで、防災の取り組みが手軽であると感じることができる。ぜひ、本書を読んで今日から震災対策を始めてほしい。