MLA 石川順子, 藤信子. "ALS 患者家族へのソーシャルサポート: ALS 介護の特徴とソーシャルサポートの受け止め方." 立命館人間科学研究 20 (2010): 41頁から51頁.
【要約】
ALS介護者に関する先行研究において、臨床心理学の見地から扱った文献は少なく、そのほとんどは看護・医学の観点から横断的、量的研究が行われた。それらにおいてソーシャルサポートを重要な要因だと認識していたが、その効果やあり方に終点を置いていなかった。そこでこの論文ではこれまで十分ではなかったサポートを利用する側の観点からALS介護トそのソーシャルサポートについて考える。
Bolmsjö・Hermerén(2003)は介護経験についての半構造化面接からALS介護者8人の大変さと悩みを質的に描写した。以下の4点が主要なテーマとしてあげられた。①ALSの病態に対する情報不足や情報が適切に与えられなかったことへの不満②生活の自由が制限され責任が重くなったこと③将来への不安,④介護の悩みの話を聞いてくれるという心理的サポートの必要性である。悩みの中で,治療の選択や介護のやり方において患者と家族の間で利害関係が衝突することがあることを述べている。これらはソーシャルサポートをどう活用するかの選択についての葛藤である。つまりソーシャルサポートはALS介護者にとって重要な役割を果たしているのである。しかしこれまでの研究は,ソーシャルサポートを供給する側の視点からの分析が圧倒的に多い。専門家が問題を評価するものが主で、利用者からの観点が欠けていたためソーシャルサポートの肯定的・効果的側面が強調され否定的・非効果的側面については殆ど扱われてこなかったのである。
研究結果ではまずソーシャルサポートのよかった点やほしかったサービスを挙げている。良かった点には,枠を超えた精神的ケアで,手術の際に,訪問看護師が有給休暇を取って,ついて来てくれた例を挙げた。あったらよかったがなかったサポートとしてミュージックセラピー、宗教関係者や精神的な支援者と心理・精神面に働きかけるソーシャルサポートを挙げた。またソーシャルサポートで非効果的だったこととして心配する友人に対して自分の行動を正当化して「何でもない」と必要以上に強がってみせるのがしんどいと述べた。不適切なソーシャルサポートの働きかけがネガティブに認知され,ネガティブ・ソーシャルサポートとなっていた。
ALS 介護で最も特徴的なことはALS独特の進行の速さである。またもう一つの特徴として進行すると自発的コミュニケーション手段を失うものの最後まで意識が混濁しない点が挙げられる。そのような特徴を持つからこそ外出できにくいALS患者や介護者にとって,社会との日常的関わりは訪問スタッフが主となることが多い。そのためによい関係性をもつスタッフの定期的な訪問は,精神的な支えにもなる。その中でソーシャルサポートは利用者である患者と家族の状況だけではなく生活スタイルと意思にあったものを適用していく必要があるのだ。
【感想】
この論文を通じて改めてALS患者の介護の大変さや、病状の深刻さを感じることができた。この論文が質問紙調査を通じて研究を行っていたため介護者の深刻な声や思いをたくさん知ることもできた。私たちが今行っているボランティア活動はALS患者んにとって極めて重要なソーシャルサポートとして機能しているのではないだろうか。その中で彼の生活スタイルや意思に合った最大限のサポートをしていきたいと感じた。またこの論文においてはALS介護においてコミュニケーションの大切さを述べていた。ボランティアに行った時には小さなことから会話をはじめ、より良い日になるようなコミュニケーションを行っていきたいと思った。(長瀬亘亮2022年1月)
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