Mitra, S., Posarac, A., & Vick, B. (2013). Disability and poverty in developing countries: a multidimensional study. World Development, 41, 1-18.
世界人口の約15%が何らかの障害を持って暮らしている。しかし、特に発展途上国における障害者の経済生活については、ほとんど知られていない。この論文では、初めて国際比較可能なデータを用いて、障害者の経済状況を調査し、障害の有無にかかわらず、経済的幸福と貧困に関するいくつかの指標提示している。今まで障害者はごく少数で開発対象とされていなかったが、今回の分析結果によると、調査対象となった15の開発途上国のほとんどすべてにおいて、障害者は大きな集団であり、障害のない人に比べて複数の経済的困窮を経験している可能性が高いことがわかった。
この論文では障害を「(健康状態にある)個人とその個人の文脈的要因(環境的・個人的要因)との相互作用の負の側面」(WHO, 2001, p.213)と理解してる。環境的・個人的要因は、健康状態にある人が機能し、経済的・社会的生活に参加する上での障壁となる可能性があります。障害と同様に、貧困も複雑な現象であり、その測定は困難である。分析では、多次元的なアプローチを採用し、生活水準と貧困の金銭的側面(消費支出)と非金銭的側面(教育、生活環境など)の両方を、世帯レベル(支出、資産など)と個人レベル(教育達成度、雇用)で考慮している。
しかしながら、分析は記述統計に限定され、障害のある人とない人の指標の違いについては、単に統計的な有意性を検証しただけである。途上国では貧困から栄養失調になり、そこから障害者になる可能性も排除できない。この点を考慮すると、障害と貧困の因果関係とくてはかなり困難を記すと考えられる。
筆者の仮説は以下の2点である。
第1の仮説は、発展途上国において、障害は多次元的な貧困と関連している
第2の仮説は、障害と関連する経済的困窮の種類は国によって異なる
分析結果は7つあり、それぞれ簡単にまとめると以下のようになる。
第1に、調査対象のほとんどの途上国において、障害は多次元的貧困の増加と有意に関連している。つまり、障害のある人は、障害のない人に比べて、平均して複数の貧困をより高い割合で、より広く、より深く、より深刻に経験しているのである。
第2に、15カ国において、障害者が直面する経済的困窮の種類(非雇用、低学歴など)は国によって異なるものである。障害者の社会経済的地位を向上させるための政策は、万能ではなく、国ごとに異なった対処が必要がある。
第3に、障害者世帯の幸福度は非障害者世帯と比べても悪化していない。
第4に、障害者の中でも、40歳以上の高齢者と複数の障害を持つ人は、多次元的な貧困に陥る可能性が高い。
第5に、経済的幸福度と貧困のギャップは、低所得国に比べて中所得国でより頻繁に顕著で大きくなることがわかった。
第6に、障害者の有病率は調査対象の15カ国でばらつきがあり、ほとんどの国で高い値(5%以上)を示している。このように、途上国の労働年齢人口に占める障害者の割合は非常に大きい。この結果は、障害が発展途上国にとって重要な問題であることを示唆している。
第7に、個人レベルでは、ほとんどの調査対象国において、障害者は障害のない人に比べて教育達成度や雇用率が低い。この結果は、教育と雇用へのアクセスを促進する政策が、発展途上国の障害者の幸福にとって特に重要であることを示唆している。
障害者の現状を分析するメリットとして、筆者は以下の2点をあげている。
開発途上国では障害者が貧困につながる因果関係を特定することが重要だと筆者も述べる。因果関係を明らかにすることは、国レベルで、障害者の貧困を削減する方法や、貧困層における障害の発生を抑制する方法について、具体的な政策提言を行うために必要である。
また、国によって違いがあることを考えると、その背景にある要因を理解することは、障害者を開発に参加させるための努力において、どのような政策が有効であるかを理解するのに役立つかもしれない。
まだまだ途上国における障害者問題は改善点が残るが、だれひとり取り残さないことを掲げているSGDsを考えると、途上国の障害者問題、ひいては福祉問題も早急に取り掛からなければならない問題であることは明白である。先進国でも福祉の問題は置き去りにされがちである。この負の面を画期的に変えれる技術、アイデアを私たちは河南替え抜かなければならないと強く思う。経済発展と障害・貧困関連の潜在的な不利な関係を調査するために、さらなる研究が必要であるということに変わりはないだろう。
(2021年10月 橘知里)
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