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Disability as deprivation of capabilities: Estimation using a large-scale survey in Morocco and Tuni

執筆者の写真: 介護班 栗田ゼミ介護班 栗田ゼミ

Trani, J. F., Bakhshi, P., Brown, D., Lopez, D., & Gall, F. (2018). Disability as deprivation of capabilities: Estimation using a large-scale survey in Morocco and Tunisia and an instrumental variable approach. Social Science & Medicine, 211, 48-60.



この論文は、チュニジアとモロッコで実施された大規模な調査のデータを用いて障害者と貧困状況の関係を「基本的能力」、「健康関連のQOL」、「多次元的貧困(貧困の指標)」に対する障害の影響を調査分析している。障害と能力の剥奪の間に因果関係があることを示すために、操作変数回帰分析を用いている。

結果としては、両国ともに障害者の仕事へのアクセスが低く、健康関連のQOL(生活の質)も低く、多次元的貧困のリスクが高いことがわかった。

障害者が体系的かつ一貫して不利な立場に置かれているウェルビーイングのすべての側面を改善するための、障害研究や公共政策に示唆を与えるものであり、両国ではウェルビーイングも向上させるために、革新的な社会的取り決めを通じて、障害者のための追加的かつ対象を絞った機会を創出する必要があることが示唆された。


この論文を読む上で必要となる知識は(論文内にも書かれているが)障害者の定義である。この論文の障害の定義は、それぞれの欠点が残る医療モデル、社会モデル、ICFモデルを超えたケイパビリティ・アプローチ(CA)を採用している。センのケイパビリティ・アプローチより、障害を「機能(人の実際の行動や存在の達成)や能力の剥奪や制限」と定義している。能力とは「実用的な機会」、つまり幸福やその他の「追求する理由のある目標や価値」を追求する人の自由でであるSen, 1992) 。したがって、障害の概念は、障害そのもの、利用可能な資源、環境的状況など、さまざまな個人的特性による能力の剥奪と密接に関連している。また、センは貧困を能力の剥奪と定義している。清潔な水や医療、学校へのアクセスが制限されている状態のことも含む。これより、第一に、労働市場に参加していないために収入を得る能力が低いという「稼ぎのハンディキャップ」、第二に、障害を持って生活するための追加コストに関連する「変換のハンディキャップ」とこの論文では定義していた。


この論文の限界については、操作変数法を用いて分析している点と、データに制約がある点だ。これは致し方ない部分もある。貧困と障害の因果関係をきれいに導くのは難しい。この論文や記載されていた先行研究によると、障害者に関する研究は蓄積があまりなされていないようである。また、障害者に関する定義も国によって違うため、研究が進まないと考えられる。

加えて、何をもって障害者とするかも、個人や社会によっても違ってくるだろう。曖昧だからこそ扱いにくいテーマだが「共生社会」やSDGsの実現に向けて、本腰を入れて取り組まないといけない問題であることに間違いはない。特に障害者関連、ひいては福祉関連の公共政策の改善はどの国においても喫緊に課題であるといえる。誰も取り残さない未来について再度考え直す必要性がありそうだ。(2021.11 橘知里)

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