[要約]
我が国では, 2016 年 4 月から障害者差別解消法が施行された. この法律にもとづき, 社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物, 制度, 慣行, 観念などのいわゆる 「社会的障壁」 により継続的に相当な制限を受ける状態をもつ障がい者に対して合理的配慮を提供する義務が生じることとなった. また, 刑務所に収容されている受刑者の中に約 1/4 の軽度知的障がい者がいることが世間に知られるようになり, 刑務所出所者の生活自立支援が社会的課題として注目されてきた. しかし, 生活自立にとって重要な 「就労」 に関して, 知的障がい者の多くは雇用機会が少なく, 犯罪を起こしたために, さらに雇用機会が得られなくなるといった 「社会的障壁」 は依然として高い. 実際に刑務所出所者を雇用する協力雇用主制度の実績は, 登録した雇用主 18000 ヶ所の約 4% にとどまり, 結果的に出所者の半数以上が再犯に至ってしまう. そこで, 本研究では犯罪を起こした軽度知的障がい者 (以後, 当事者という) の 「就労を軸とした生活自立」 の問題を取り上げる. なぜなら 「就労」 は当事者の自尊感情を増すことで彼らをエンパワメントし, 生活自立の実現に不可欠であるからである.
そこで, 本研究では, 犯罪を起こした軽度知的障がい者の就労を軸とした生活自立の実現に向け, 障がい者本人側と, その家族・友人・職場の支援員などの支援者側との関係における促進・阻害要因の解明, 並びに当事者の就労の受け入れと継続に関わる全国各地の福祉事業所や一般企業の意識・意向や地域連携における促進・阻害要因の解明を通して, 当事者へ向けた支援方策への示唆を得ることを目的とする.
[感想]
私は先日のゼミで行われたビブリオで、ケーキの切れない非行少年たちという本を紹介して、その本の中で初めて非行少年の中には軽度知的障がい者の方が多いということを知りました。本の中では、もともとは障がいがあるのに支援が行き届いていないという問題から、いじめに発展し被害者になり、最終的には非行に走り加害者になってしまうというケースが多くあることを学びました。本には、少年院から退院していくところまでしかお話がなかったので、この論文ではそのような人々の退院後についてを知ることができとても勉強になりました。出所しても雇用主は約4%という少なさで、再犯に至ってしまうというのは社会の方にも問題があるのだなということを知りました。自分が雇用主だったとき、犯罪を犯してしまった人を受け入れることにはとても勇気がいることだと思うので、そのようなことも考えた政策ができればよいのではないかなと思いました。
中 泉澄美
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