田中誠, 土井勝利, 萩原義文, 宇川浩之, 矢野川祥典, 石山貴章 (2011) 「農業分野における障害者就労~ 事業所現場の実践を通して~」 『就実論叢, (40)』 61-72
障害者が農業分野において地域・社会で実践し貢献している現状の実践例を明らかにし、これからの農業分野への障害者雇用促進に向けて課題を提示している。高知県・岡山県の事例を通して、障害者の就労の現状と農を進める上でどのような支援が実施されているかが記載されている。
複雑多岐な社会構造の進展に伴い障がい者人口の増加傾向がみられ、これらの人々に対する有効な治療法は確立されていないとも言われていた。しかし、米国では、精神病患者のために園芸療法が開発され、日本でも紹介されている。実際、私の知り合いが経営する社会福士法人では、この園芸療法ににたものを取り入れているところがある。
本稿では、園芸療法を「医療や福祉の領域で支援を必要とする人たちの幸福を、園芸を通して支援する活動」と定義している。農作業をすることを園芸寮と指すことが多いよだろう。園芸療法では「豊かな自然の中で農業を中心とした作業で、 優しさ、思いやり等の人間性を養い、根気・体力等の基礎的な作業能力を養うことができる」「農繁期は働くことに主眼を置き、農閑期には外出行事を行い、気持ちの切り替えをし、癒しの効果がある」という正の効果が期待されている。続けて、田中(2010)が紹介されており、『障害者福祉施設における障害者が「地域で生き、地域で暮らし、地域を つくり」自己と農を育み、地域社会に貢献していることはいうまでもない』と指摘している。本研究対象は、農家と協力で農業に携わっており、農家という第三者を含んだ上での、障害者雇用の重要さが語られていると感じた。研究対象の農家からは「障害者に出会い、職場実習を受け入れ、障害者の個々人の性格を知り、そして雇用につなげ、 障害者とともに「はたらき」、働く姿に感動を起こしている」という回答もあった。障害者との出会いから「仕事ができることへの可能性」を感じて、徐々に雇用を拡大している農家も多い。また、地域の役所から支援金が配布、制度構築がなされるなど、地域全体でサポートが、雇用に正の影響があるように伺えた。少子高齢社会が進む地方において、第一次産業(農林水産業)の担い手は減っているのが現状である。その地 域を障害者福祉施設利用者が地域活性化施策を実践するいい事例だと考える。濱田(2009)が述べるように自立とは、「共生関係の中で、自然や他者を配慮した上で、個人が自主的に行動・存在する」ことだろう。障害者が地域社会に参入するためには、障害があるかどうかではなく、彼らはなにができるかということが肝心になってくるのではないだろうか。そのためには、「利用者の個別性に合わせた就労支援を増進するための要点として、働くことの意義、生活機能と障害の関係、ニーズと障害の受容、職業リハビリテーション活動、個人特性と環境要件の見方、 雇用主の対応と支援体制について、キャリア発達と地域ネットワーク」が重要になってくるだろう。(橘 知里 2020,12)
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