伊藤亜紗(2015)『目の見えない人は世界をどう見ているのか』株式会社光文社
本書では〈見えない〉ことを欠落ではなく、世界の別の顔を感知できるものとしてとらえている。障害に対して新しい社会的価値を生み出すことを目的として書かれている。
私は本書を読んで、著者の言葉選びがとても印象的だった。見える人と見えない人が好奇の目を向け合うとか、健常者と視覚障害者が互いの違いを面白がるというように、普段あまり良くないと思われている言葉が多く使われていて、言葉の本当の意味を考えさせられた。また、そのような言葉遣いからもわかるように重たく深く考えるということが、必ずしも正しいわけではないということを学ぶことができた。
また、本書のキーワードとして「意味」という言葉が出てくる。これと対の意味を持つ言葉として「情報」ということばが用いられている。本書の中では情報ベースの関係と意味ベースの関係の違いを解説しているが、私は自分が障がいのある方と情報ベースの関わりしか持てていないということに気がついた。私は今までの人生で障がい者の方と関わった記憶というのは小学校低学年以来なく、障がい者の方にお会いすると何かしなければと緊張感が生まれてしまう。このように何かしなければという思考に至ることこそが情報ベースの付き合いしかできない原因なのだと分かった。意味ベースの関わりを持って初めて、お互いの差異を面白がることができる関係になるのだと学んだ。福祉に縛られることなくそっちの世界を知って、旅行をしているかのようにその「意味」を体験することは、障がい者の方と意味ベースの繋がりを持った人にしかできないことなのだと知った。すぐに出来ることではないと思うが、私もこれからの活動を通じて、障がい者の方と意味ベースの関わりを持てる人になりたいと思った。
(中泉澄美2021年10月)
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