2006年に国連で採択された「障害者の権利に関する条約」は、障がい者を保護の対象から権利の主体へ変化させ、本人の意思を尊重する支援がより重要視されるようになった。本論は、知的障がい者支援施設にiPadを複数台導入し、 意思決定支援に限らず、支援現場でどのようにiPadが 活用できるのかを実証的に検討している。身体障がい者のコミュニケーションにおいてICTは活用されてきたが、いまだに知的障がい者に対して使用した例は数少ないだろう。2つの障害者施設においてiPadを導入している。iPadを活用したあとで、7項目におけるアンケートを実施し、活用の成果を導き出している。アンケートは職員数名に行われている。iPadの活用方法は施設には違いがあるものの特定のアプリケーションを介して利用者と職員のコミュニケーションをとる方針が多いように読み取った。アンケートからは「利用者が自分たちで生活実習プログラムの内容を決め、実行していくことで、達成感・充実感が高くなった。」「この 取り組みでは失敗も経験となる。」「職員も利用者の思いや意思を探っていこう、汲み取っていこうと いう意識が強くなった」との正の感想があるとともに、「自分たちが計画したことが失敗してしまうこともある。自分たちが主体的に取り組むことは、失敗する可能性、そうなった場合の責任も背負うことであるが、これも利用者にとって は大きな経験である」と述べられていた。後者は、iPadを導入せずとも知的障害者の方は体験していることではないだろうか。この意思疎通をより良くするためにiPad導入というのは大変画期的なことだと思うが、この調査では、「職員の基礎的な機器へのリテラシー、利用者の特性に合わせたアプリケーションのマッチング、扱う職員側の課題」が挙げられたように、うまく使いこなせるこができなければiPadの正の効果はなかなか現れないのではないだろうか。時代にあったものを導入し(ICT)、技術によってなくせる問題をカバーし、障がい者の方達が生活しやすい社会を構成していくように努めたいと思える論文であった。(2020年10月橘知里)
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関西学院大学 栗田ゼミ 障がい者・介護班
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