石野莞司(2018) 「ルワンダにおける草の根技術協力事業の嚆矢: ICT を通じた障害者による収入創出の試み (1) 」綜合報告 東北福祉大学研究紀要 42, 119-137.
まずは石野(2018)の要約を行う。
2013年度第2回採択事業として実施されたJICA草の根技術協力事業(草の根支援型)の実施報告を行うものである。
事業の当初の目的は,「情報弱者」でもある障害者向けにパソコン操作技術獲得のための講習機会を提供すること、これらの講習を通じて身につけた技術を活かした収入創出を試みることの2つである。
まず、講習機会の提供にかんしてまとめる。
事業実施に伴うパソコン講習では初級44名、中級42名,上級29名、フォローアップ18名の修了生を輩出させ、ルワンダの障害者への「学ぶ機会」を提供した。参加者の障害の区分は、聴覚障害者、身体障害者であった。1994年の大虐殺の被害者も含まれていたかもしれない。また、障害の起因は医療事故もしくは医療過誤による障害が多いかった。
次に、講習を通じて身につけた技術を活かした収入創出の点だ。フォローアップ研修では、より実務に近い形での演習が行われた。問題点もいくつか浮上した。企業でよくある「指示待ち」人間に講習生がなり、参加意識を高めるために営業を始めてみても、責任は誰にあるのかなど、様々な問題が露呈した。人材を適材低所で役割を振ってみてもうまくいかなかったようだ。これはどこの企業もあることであろう。また、受講生による収入獲得活動についてリサーチを十分行わず行き当たりばったりの方針に終始した問題も影響している。この点においては、当該事業の計画段階で収入獲得活動の内容について,現地情報を集約しつつ、かなり詳細化した計画内容を持たないと十分な成果が得られない。事業の計画に当たっては受益者やカウンターパートを含めて、現地情報の集約から分析、それに基づいた計画内容の詳細化を図ることが際立って重要である。
以下からは私の感想を述べたい。
障害者にもはあたらく機会を提供する、そのためにまずは学ぶ機会を平等に提供するということは、途上国といえども「誰も取り残さない社会」を構築する上で重要だと感じた。また、日々の生活自体にハンディキャップがあるため、学校までの送迎など合理的配慮が先進国より大変だと感じた。問題が出るのも当たり前で、計画段階で浮上する問題を予想することはできない。事前に石野(2018)のような報告書をよ無事の重要性を感じた、また、実施する国によっても勃発する問題点は違ってくるだろう。
特に重要だと感じたのは、受講する障害者自身に「参加者」ではなく、実際に稼ぐことが最終目的だと気づいてもらえるかが大事になるだろう。「海外から来た人に頼まれてこなしているだけ」という気持ちのままではせっかくの事業も無駄になってしまう。当事者、サポーターの気持ちの整合も大事なのかと感じた。
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