藤山一郎(2017)「国際協力における「緩い」よそ者の役割 ― インドネシア・コミュニティ学習活動センターに対する 学生ボランティア活動を事例に ―」立命館国際地域研究
【要約】
「学生団体によるボランティア・ツーリズムから見た場合、どのような特徴と意義があるのだろうか」という問いに対して、国際協力分野の学生ボランティアをボランティア・ツーリズムのひとつとして位置 づけ、ゲストとホスト・コミュニティ相互の変化と成長を「よそ者」論から分析している。1990年代からボランティア・ツーリズムが流行するようになった。海外においてもよそ者としての学生ボランティアはホスト・コミュニティとの間で、 働きかけとその受け入れをめぐる相互関係の中で両者が「気づき」を得て変化しうることを明らかにした。ただ、学生ボランティアによる働きかけ方が失敗であったとしても、ホスト・コミュニティはそれを致命的なものとして受け止めなかった。そこから双方の気づきと変化が始まり、国際協力の現場における「緩い」よそ者の可能性を検討する必要があることを示唆している。また、ボランティア・ツーリズムの議論の多くが、参加者(ゲスト)の利己的動機や変化、それが社会に与える影響に関心を寄せる中、本稿ではホスト・コミュニティもまた主体的に変化し、それがゲストの変化に影響をおよぼす可能性があることを明らかにした。ボランティアはゲストだけが実践しているのではなく、多くのホスト・コミュニティもまたゲストの受け入れというボランティアを実践している。ボラ ンティア・ツーリズムの議論を発展させるためには、ゲストとホスト・コミュニティの関係性についてより一層の精緻化が必要となる。
【感想】
ボランティア・ツーリズムに参加する動機は「利他的な動機」と「自己的な動機」の二つがあり、どちらも大事であるが、近年では、とくに大学生を中心とする青年を対象とするボランティア・ツアーは「安心・安全・ 快適かつ手軽に貧乏で不幸な孤児に対する教育支援や福祉活動ができる」ことを謳い、商品化された貧困と不幸をツアー参加者が消費し、それを自己発見や自己成長という形で満足を得る現状があると述べられていた。私も、つい自己的な動機のみで行動してしまうことがあるが、形式的ではなく内実の伴った言動を心がけたい。
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