馬場卓也、中井一芳(2009)
『国際教育興協力における授業研究アプローチの可能性-ザンビアの事例をもとに-』
【要約】
先進国においても開発途上国においても、教育の質は重要な課題となる。ザンビアでは、既存の制度においてツールとして授業研究が用いられ、授業研究は中央で描かれた政策・制度を、実際の教室に具現化していくために重要な手段となりうることがわかった。また導入の際に、既存の制度が少なくとも授業研究の導入や展開を円滑にすることも見られた。
授業研究は学校での改善に取り組みにおいて、そこに関わる教員の創意工夫によって大きく進展する可能性を秘めている。ただし、その歴史が示すように、形式に囚われすぎると硬直化する危険性も有している。
ザンビアでは上からの改革であったにもかかわらず、それに触発されて積極的に取り組む教員・学校が出てきた。特に教科教育研究・実践が未熟な開発途上国においては、少なくとも当初は押し付けられることで、その意義を見出だせる可能性がある。冒頭に掲げた広範にわたる質の高い教育、そしてそれを担保する授業研究が、面的な広がりを持ち、しかし制度の逆機能を持たないようにするためには、質の高い授業のイメージを具体化することと、それを現出させるための教育的な努力を支える土壌が必要である。最終的には、より長期的な視点での教科教育研究および実践を見据える必要がある。
【感想】
途上国において、様々な事由で学校に通うことができない子どもも大勢いるが、通うことができたとしても、受けられる教育の質は低いこともある。それは教師の質(そもそも資格がない、授業にこないなど)が悪いことにも関係する。
今回の論文は、授業の質に関しても取り上げられていた点が非常によい。しかし実証的な側面がない(経済学の論文というわけではないので仕方のないことではあるが)ため、我々がフィールドワーク調査に行く際は理論モデルや計量モデルを組み立てていく必要があると考えた。
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