"ボランティア活動の動機の検討"
伊藤忠弘
研究年報/学習院大学文学部, 35-55, 2011
本論文では、ボランティア活動の動機について、「他者のため」という利他的動機と「自分のため」という利己的動機の枠組みでの整理を試みる。
①援助行動を行いやすいパーソナリティや個人差変数はあるのだろうか。例えば、援助行動を予測する特性として親和欲求や共感性が取り上げられている。また、ボランティアの特徴や対象によって、その動機の構造が異なる可能性を示唆している。
○スポーツボランティア
会社ぐるみ、学校ぐるみ、地域ぐるみでボランティア活動に参加することがあるため、「他律参加」のような理由も他のボランティアよりも生じやすいと考えられる。
○災害ボランティア
被災地との近接性や被災地や被災者への好意的態度は災害ボランティアに固有な動機と考えられる。
しかし、現実の援助行動の動機を特定することは難しく、様々な利己的な動機も混在しうる。パーソナリティ要因として「する人」と「しない人」の間に一貫した差異を見いだすことは難しいとの結論に至っている。
では、援助行動の動機が個人のなかでどのように関係づけられているかといった、動機の構造を考えていくことが重要であると考えられる。
②そこで次に、動機がボランティア活動を継続していくなかで変遷していく可能性について検討を行う。
ボランティア活動が個人にとって肯定的な影響をもたらしていることが確認されている。それでは、活動を継続するなかで、動機自体は変化しているだろうか。
最初に利他的動機を挙げた人の14.4%が逆に継続の動機として利己的動機を挙げるように変化していた。また活動を通じて最もうれしかったことや良かったことを尋ねたところ、活動の開始の理由として利他的動機を挙げた人でも、利己的要素を挙げていた。
最初の活動動機の違いによってボランティア活動を継続するかどうかが異なり、利他的動機を保持している人の方が継続しやすいという結果として解釈されているが、活動を継続していくなかで利己的な動機から利他的な動機へと変化している可能性もあるだろう。
③最後にボランティア活動の動機と達成行動における他者志向的動機の類似点について考察を行う。
達成行動における他者志向的動機は、周りの人から応援や実際の援助を受けて、その期待に応えようとして努力するという側面を含んでいる。「恩返し」という表現に表れるように、一種の互恵性に基づいた動機づけである。このような互恵的な動機はボランティア活動の動機としても指摘されている。
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