松本悟、佐藤仁(2021)「国際協力と想像力 イメージと「現場」のせめぎ合い」『日本評論社』
要約
この『国際協力と想像力』の本では、タイトル通り一貫して想像力であるイメージの大切さを説いている。想像力とは、「違った可能性を思う力」であるという。人のイメージは、正確なイメージであったとしても、不正確なイメージであったとして、いったん一定の方向に操作されると固定されて、無批判に再生産される。そのとき、「違う可能性」への想像力が制限され、またそれにより未来に向けた行動の選択肢も限られることになる。この問題を解決するのが「違う可能性を思う」イメージである。また、具体的なイメージは、適当な行動につながる。国際協力の想像力については、国際協力の活動は日本から遠く離れた場所で困っている国や人々に対する働きかけが多くの国民にとってイメージしがたいために、国際協力は自分とは関係ない話題であると捉えられたり、「普通の活動」として認められなかったりすることが多いと述べられている。「どのようなイメージで、国際協力の対象を設定するか」が大切であるため、適当なイメージを作るために支援先の正確な情報を集め、発展の方向性を決める必要がある。本書では、カンボジアの援助やスリランカでの事例を基にしてイメージの大切さが書かれている。
感想
私は、国際協力についてあまり知識がなかったため、この本を読んで国際協力の支援の流れやその時に考えるべきことを多く学ぶことができた。私もこの本で大事であると強調されていたイメージの大切さについて感じる経験をしたことがある。大学受験にむけて受験勉強のモチベーションが下がってしまったときには、志望大学でキャンパスライフを謳歌している自分の姿を想像することで、自然と勉強に身が入るようになった。これは本文中でいう「具体的なイメージは人を行動させる」ということである。また、国際協力だけではなく、何か目標に向かって物事に取り組むときにもイメージすることの大切さは応用できると思う。対象を詳細に知り、イメージして、それに対するアプローチを行っていくことが重要である。来年の夏にマダガスカルに調査に行く際には、事前準備として日本でマダガスカルの正確な現状について調べ、それに対して、マダガスカルの人々が望むことやマダガスカルの将来をイメージし、課題や支援を考えたい。
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