「要約」
環境保全活動において、日本人の場合環境に対する意識よりも、社会に対して自分自身の行動をどう考えるかといった、「社会的有効性感覚」が重要となっている。この感覚を持たない人は、やっても仕方ないという先入観から、それを避けてしまう。また、日本人の「自然」に関する概念・価値観は欧米の人々とは大きく異なっている。本論文では、1997年9月に実施した日本における調査結果を用いて、アメリカにおける調査結果と比較し、環境に対する価値観・態度などを明らかにし、行動との関連を示す。結果から、アメリカでは伝統的な秩序を重んじる価値観は、環境重視の考え方とは対抗するのに対して、日本においてはそうではなく、同じ方向性の考え方であることが分かった。また、環境保全行動と価値観、個人属性の関連については、伝統的価値観、利他的な価値観は観光保全行動を促すことが分かった。さらに、環境重視の価値観は政治的な行動に関しては有意に働いていたが、エネルギー節約、消費者行動に関しては有意ではなく、経済成長重視の考え方が、負に有意であることが分かった。
「感想」
社会の目を気にするという、日本人の性格が環境保全行動までにも影響を与えていると考えると、情けなく感じられた。人間と共存する自然を守るために行う活動への参加要因が、自然を思いやる気持ちからくるものではなく、それをすることによる社会的評価の獲得が目的になってしまっている。経済重視の考え方を持つ人にも、自然の大切さと保護の重要性を理解してもらうためには、それだけに固執していてはいけないことが分かった。環境保全関連のイベントにおいても、そういった点を考慮することが必要不可欠であると感じた。
Comments