【要旨】
都市化・機械化をはじめとする近年の著しい社会状況の変化が、児童・生徒を中心とした青少年の健全なる育成に対して多くの好ましからざる影響を与えている。そこで本論では、自然教室に着目し、実施の実態について文部省資料を参考にすると共に各地の教育委員会を対象として自然教室に対する期待と問題点を中心とした調査を行ない、それらの結果について野外教育的観点から考察を行なった。その結果、自然教室をはじめとする野外教育活動は、地方自治体において事業に対する理解の徹底を促すと共に、青少年に対する野外教育活動として人間育成にねらいを定めた内容の確立を図り、また学校においては広く各教科からの連携を保った統合的内容とその進め方についての検討を行うことが必要であることがわかった。そして何よりも自然教室を担当すべき指導者の資質の向上を図るべく、教育現場における野外教育担当指導者の育成と、勤務体制に関する制度の確立を急務とすることが、調査の結果より明らかとなった。
【感想】
本論での調査により、各地における白然教室に対する取組み状況をみるとかなり活発に展開されていることが伺えた。また、自然教室の実施により,特に期待したい成果については、ほとんどの項目において50%の支持率を示しており、自然教室に対する期待が大きいものと理解することができた。しかし一方で、自然教室の実施を困難にする条件として、第1位には「教師の勤務時間に問題がある」とするものと、第2位には「公的な予算や経費の不足」と2つの項目で約半数による阻害条件としての指摘がなされていた。また、公的な予算や経費上の問題に関しては、常に困難な背景を有しているものと思われるが、少なくとも必要経費の3分の1が補助されるといった自然教室の制度は、これらの不足を少しでも補おうとしているものであり、この制度に対する理解や有効な活用がなされていないことが分かった。本論では、自然教室を担当すべき指導者の資質の向上そして勤務体制に関する制度の確立を急務とすることが調査結果により明らかとなったが、具体的にどんなようにこういった事業に対して進めていくのか統合的に進め方についての検討を行うことが必要 であると感じた。
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