要旨
本書は生物ジャーナリストであり写真家でもある筆者がたくさんの写真を用いて生物多様性の大切さを説いたものである。100年ほど前には1年間に1種類ほどの種が滅んでいたスピードが、現在では年間4万種の生物が絶滅していると考えられている。たとえ小さな生物であっても、すべての生き物はつながりを持ちながら生存している。人間もその例外ではないということを忘れてはいけない。ゴミ捨て場のペンギン、溺死するアザラ、毛の抜けたワオキツネザル、切り倒されたバオバブの樹などの写真はそのことをしっかりと伝えてくれる。
感想
表紙にあるバオバブの樹の写真に目をひかれた。今年私たちが訪れたマダガスカル減産の樹木である。日程の関係で残念ながら目にすることはできなかった。しかしバオバブ以前に樹木が生えているところをあまり見ていない気がする。サルを飼育している公園でしか木を見た記憶がない。それだけマダガスカルには森が少ない。本書でマダガスカルの森林面積は国土の10%を切っていると書かれていたことにもうなずける。樹木の多くは切り倒され炭にして売られるという。それが貧困家計の生活を支えているという。実際に調査した家計にも副職で炭づくりをしている人もいた。そうした炭づくりのために切られる樹木は確実に環境破壊であるといえるが、それを禁止するのはなかなか困難であることもわかる。なぜならそれが貧困家計を支えていることもあるが、法律で禁止したところでそれを守らせる仕組みが整っていないからである。環境問題には世界全体で取り組まなければならない、という言葉の裏には、貧困など経済的な側面も大きく影響しているのかもしれない。
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