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『兵庫県丸山湿原における湧水湿地の保全を目的とした植生管理による湿原面積と種多様性の変化』

著: 福井聡 武田義明 赤松弘治 浅見佳代 田村和也 服部保 栃本大介(2011) ランドスケープ研究より 


要旨

本論文では、兵庫県に位置する湧水湿原である丸山湿原を事例に、湿原全域での植生管理が当該湿原の面積と種多様性に与える影響が明らかにされている。


湧水湿原とは、貧栄養が特徴的な湧水の多い立地に発展する湿原である。

こうした湿原は、樹木の成長に起因する被陰や乾燥化により、植生遷移を迎える。

丸山湿原も例にもれず、遷移による種多様性や湿原域自体の減少に悩まされていた。


本研究では、2006年に丸山湿原全域で兵庫県が行った植生管理(周辺域を含めた樹木皆伐、二次林間伐)の影響を、2005年と2007年の調査データ(植生図など)を用いて測定した。


結果として、植生管理後に、湿原面積、湿原要素(特有な生物種)ともに20パーセントほど増加していることが分かった。

なお、その具体的な根拠としては、

湿原周辺域を含めた樹木皆伐、二次林間伐によって

1.湿原の日照条件が改善したこと(背の低い湿原固有種にも日があたるようになった)

2.湿原の水分条件が改善したこと(固有種以外の蒸散量が減り、地下水位が上昇した)

ことが挙げられている。


感想

まず、本論文の著者が述べていたように、湿原全域を対象とした保全研究が(執筆当時から月日が経っているとはいえ)進んでいないことに対し、印象深く感じた。

研究の手法も、区画ごとでの地道な観測が元となっているだけに、環境保全それ自体と相変わらず楽な作業ではないことを思い知らされた。


著者が述べていた今後の課題「一時点での植生管理の効果は、どれほどの期間持続するのか?」は、「植生管理がされなくなった湿原は、遅かれ早かれ、変化・消滅する運命にある」という事実を逆説的に示しているのだろうか。

私たちMoribitoも、自分たちの活動の影響、成果を常に反省しながら皿池での活動に取り組まねば、と思わされる論文であった。




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