著: 松下京平(2009) 農業経済研究より
要旨
本論文では、滋賀県全域の農家を対象として、地域共同保全運動の実施有無にソーシャル・キャピタルが与える影響を明らかにしている。
研究の背景には、2007年の「農地・水・環境保全対策」の施行がある。これは、従来の農村政策とは異なり、農家のみならず地域全体としての農村振興(生活資源、農業資源、生態系・景観保全)が求められている。
この政策の実施にあたり、筆者が注目するのが「ソーシャル・キャピタル(社会的資本)」である。物的資本(施設、設備など)や人的資本(教育、健康など)のみならず、地域内外のコネクションが、農村の振興には不可欠だというわけだ。
この仮説を検証するにあたり、筆者は、2000年~2008年の滋賀県における農業センサス等の農家データ(約1500件)を使用し、統計分析を行った。
その結果、
1.地域内外でのソーシャル・キャピタル(地域施設の共同管理、外部交流など)が存在するほど、同地域での共同農村保全運動がなされている傾向がある
2.地域内部でのソーシャル・キャピタルが多いほど、地域外部でのソーシャル・キャピタルが少なくなる傾向がある
ことが明らかとなった。
このことから、農村振興にあたっては、地域内部のソーシャル・キャピタルと、地域外部のソーシャル・キャピタルとのバランスを保ち、より地域共同保全活動が盛んになる仕掛けづくりが重要だということが示唆された。
感想
地域住民を巻き込んだ形での環境保全の可能性を知りたく思い、本論文を選んだ。
やはり、地域内外でのコネクションが強いほど、当該地域での保全活動は協調的なものになるようである。
私たちが活動を行っている三田市はどうだろうか。
伝統的な農村集落があると思えば、近年大規模に開発された新興住宅地域もあるのが、三田市である。
一概にまとめてしまうことはできないだろう…
三田で出会う人々とのつながりを大事にしつつ、彼ら同士のソーシャル・キャピタルを育み、なおかつ環境保全活動への参画を図る道を探していきたいと思う。
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