著: 大窪 久美子(2002) 日本草地学会誌より
要旨
かつて茅場や採草地、放牧地として我々の身近に存在した半自然草地(草原)は、1960年代以降急速に草地としての生産価値が失われ、土地利用形態が変化した結果、開発や放棄後の遷移の進行などでその面積規模は減少、縮小し、植生そのものが変化してきている。
半自然草地の減少、変化は、それらを生育地とする多くの草原性草本植物の減少を招いており、生育地や餌資源供給の場として利用する小動物の減少をも招き、特定種の絶滅危惧のみならず、生物多様性の劣化や生態系全体への影響が危惧されていると言っても過言ではない。
生態系への影響を与える要因としては、園芸用の乱獲や半自然草原の開発、農業の近代化、特に大規模な基盤整備事業の実施や薬剤の変化などが挙げられる。
このことから、生物多様性維持のため、草刈りや火入れ、放牧を維持していくことが重要だといえる。
日本の半自然草地における生物多様性研究は始められたばかりであり、今後は階層レベルのみならず、階層相互にわたる研究の発展が必要とされる。
感想
現代では技術革新・都市開発が急速に進んでおり、一方で自然に対する意識が薄れてきている。
とはいえ、我々の社会が生態系を土台として確立されていることは、明らかである。
つまり、生態系の崩壊は、社会の崩壊に繋がるといえる。
それを防ぐためにも、生物多様性を成立させる生物それぞれの生育地を守り、私たち人間がそれらを整備していかなくてはならない。
本稿から、私たちが皿池湿原で行っている活動の重要性に改めて気づかされた。
そして、皿池湿原をより良いものにしていくために、さらに深い知識を獲得していきたいと思う。
参考文献
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