中島敏博 田代 順孝 古谷 勝則
【要旨】
都市近郊では市民による緑地保全活動が盛んであるが、参加者の不足や高齢化が課題である。市民による緑地保全活動の研究は、里山保全活動などがこれまで盛んに行われている。
そこで、本研究では生活圏と緑地との距離が緑地利用に影響があると仮定し、各緑地利用を促進する生活圏からの距離をより具体的に明らかにすることを目的とした。生活圏とは日常的によく利用している範囲を指し、緑地利用は認知、利用経験、日常的利用、緑地保全活動への参加意欲(月1回程度)として規定した。
結果として、知る、経験するという段階までは生活圏からの平均距離で300m以内の緑地は高い認知および経験されている緑地である。個別では生活圏から200m~250m以内の緑地は日常的に利用され、保全活動への参加も肯定的であると言える。
本研究は人間行動の原理に沿った誘致圏論を提案したものであり、年齢や男女などの分類、公園サイズによる分類など、より洗練されていくことが必要である。
【感想】
本論文から、私は保全活動を行う側の視点でしか物事を捉えられていないことに気づいた。市民側を主体とした研究を行うことで、問題の解決策が見えてくると感じた。また、保全活動に参加する動機や参加しにくい・できない障壁となっているものは保全活動に対する意識や考え、価値観によるものが大きいと考えていたため、自身が考えているよりも若者の環境に対する意識が高いことの説明がつかなかった。しかしながら、精神的なものや価値観といったものではなく物理的な制約に焦点を当てることで、住民と保全参加をより密接した形で捉えることが出来ると分かった。課題解決に向けて地域性に照らし合わせながら考えることの視点を忘れないようにしたい。
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