Joanne Vining
【要旨】
自然資源がかつてないほど逼迫している今、人間と自然界の関係をいかに改善するかが重要な課題となっている。その一つの方法として、人間以外の動物、種、生態系への思いやりと、その関係が資源保護や環境保全を促す鍵になるかどうかを探っている。社会では、家畜や野生動物への関心が高い。人間と野生動物の相互作用や人間とペットの相互作用については多くの研究がなされているが、これらの関係と環境保護への関心との関連についてはほとんど研究がなされていない。本論では、人間と他の動物との関係を理解する上で極めて重要と思われる3つのテーマ、①人間と自然界との間の分裂、②人間以外の動物に対する思いやり、共感・感情的関係の発展、③最後に他の種に対する魔力、深く変わらぬ魅力について取り上げられていた。
【感想】
私は、他の動物とのつながり、そして自然への思いやりについて、といったように深い内容の論文を初めて読んだ。人と動物の絆の理解は進んでいるが、その絆が2つの個体を超えて一般化されることは証明されていない。動物個体への配慮が種への配慮につながるかどうかは、人間個体への配慮が人類への配慮につながるかどうかと同様、わからない。種を大切にすることが生態系を大切にすることにつながると考えることはできない。そして、おそらくさらに問題なのは、生態系への配慮が保全行動につながる可能性について、私たちはほとんど理解できていないことである。また、本論では、感情の問題は基本的なことであるが、私たちは思いやりのようなポジティブな感情にとどまらず、もっと広い範囲に目を向ける必要があるとしていた。ある動物を保護し、可愛がる一方で、他の動物を食べたり、搾取したりすることによる罪悪感や認知的不協和 、ある種に対する嫌悪、野生で多くの生き物が困っていることに対する絶望など、負の感情に対してもっと考えて行動するべきなのではないかと感じた。また、「自然」は大きな概念であり、大きな存在であるため、人間にはなじまないかもしれないと述べられていた。環境というグローバルな概念は、ほとんどの人にとって、環境の中の特定の存在ほど意味を持たないかもしれない。自然を自分たちの一部ではなく、特別な「他者」として捉えた方が、自然はより高みに置かれ、保護されるのではないだろうか。人間と動物の相互作用について、自然への思いやりについて、ひとりひとりがそれに対して視点を変えたり、広げたりして、環境保護への関心を高める必要があると感じた。
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