「要約」
自然環境のバランスが大きく変化していくなかで、土壌保全による環境保全の重要性が増してきている。土壌保全では畑の耕耘方法、有機物投入、マルチ、三圃農法などが古くから使われてきた。これらはヨーロッパなどで生み出された。一方、日本では水稲栽培に寄り添った自然環境と一体となる土壌保全及び環境保全が行われた。「土壌保全」は戦後、畑地の浸食防止対策に始まる。土壌保全には2つの技術体系がある。一つ目は土壌を保全するために将来発生する諸災害を受け止める保全技術。二つ目は本来の土壌に潜在する環境保全能力を引き出し、または高め、自然環境を管理することで地力の維持を行う技術である。「環境保全」という言葉が頻繁に使用されるようになったのは、1967年の「公害対策基本法」以降である。環境保全では、人間の自然に対する働きかけが自然環境を変化させ、周囲の空間にも影響を与え、それが再び社会にフィードバックされるという循環がある。現在、農業土木にはいくつかの大きな改革が進んでいる。まず、環境保全に科学的要素や生物的要素を取り入れるということだ。そして、土壌侵食問題において持続可能な物質循環との関係が薄かったが、現在では自然景観保全が取り入れられるようになった。土壌保全と環境保全の関係として、農地保全工は災害防止に役立ってきたが、自然に手を加えることから、周囲への影響が出てしまい、それが跳ね返ってくるという問題がある。この負の跳ね返りを最小限にすることが今後の課題である。
土壌保全では、表土の流亡を防ぐことがまず求められる。裸地では草地と比べて流去水量は6倍、流亡土量は30倍にもなるとの報告がある。これらの多くは河川に流れ込むと考えられる。この流れ込んだ土壌が河川の底に堆積し、水域汚濁を増大させてしまっている。従来の水食対策では多雨期を対象とした対策が重視されていたが、裸地や耕作放棄地を作らないことが意識されるようになった。また中山間地域においては、畑地だけでなく水田の維持管理が浸食防止にとって重要である。
農業土木的環境保全は、土壌保全や環境保全に依るところが大きい。これらを適切に行うことで物質循環のサイクルを生み出せる。また、環境整備事業の持続には地域支援が必要不可欠である。例えば、土壌の肥沃性を増すためには腐植質の投入が効果的である。ここで、農地と森林を結びつけるためには、保全の管理責任者を設ける必要があるなどといったことである。地域資源の管理主体を明確化することが環境保全を進めるうえで役立つであろう。
「感想」
環境保全を行うためには、地域との協力がなくては成り立たないということは、私たちの今後の活動に生かしていくことが出来ると感じた。環境保全を行っている団体は、地元住民で構成されていたり、行政などと連携をして活動していることが多い。その理由はまさに、地域の協力なしでの活動には限界があるということだと思う。また、人間が自然に対して行った活動は、人間に良くも悪くも返ってくる。つまり、私たちの活動が自然においてどんな意味を持つのか、また自分自身にどのような影響を与えるのか精査する必要がある。自己満足な活動にならないよう、地域とのつながりや活動意義の確認を心がけ活動していこうと思う。
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