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小学校における環境教育カリキュラムの分析と評価 高橋佳生・村上雅弘

「要約」

環境教育の重要性は広く指摘され、国からもその実践を要請されているが、教育現場においてそれが実践されている状況ではない。そこには、「環境教育の学習や活動の内容が特定できない」という問題がある。環境教育は、人間の存亡にかかわるものとして早急に行う必要があるが、教師にとっては教科として実践が迫られているものではない。環境教育の目的には、「環境問題解決に至るプログラム」と「教育として人間育成にかかわる」という二つがある。その内容としては、体験を重視した教育が必要である。ネイチャーゲームや自然教室は、生態系の理解よりも「内面」や「感受性」と表現されるような人間形成そのものにかかわる体験である。教育現場では、感受性などの子どもの内面重視と環境問題に対する態度・実践的重視などのように、複数のねらいを合わせたり、複数の体験を合わせる場合もあるため、環境教育の明確な区別が難しいことが分かる。重要なことは、「学校教育の一環として意義深いものは何か?」「子ども自身にとって意味を成すものは何か?」をもとに学習活動を組織することである。

小学校環境教育実践校のカリキュラムについて、全国の160校アンケートに調査を行ったところ、「特別に設けた環境教育の教科の時間」を用いて環境教育を行っている学校は7校、うちそこに重点を置いているのは3校と少なかった。また、年数回の重点時間を中心にした環境教育が多いことから、環境教育を現在の教育カリキュラムに組み込むことが容易ではないことが分かる。環境教育のねらいとしては、人格形成や環境問題解決を重視する回答が多かった。問題点としては、時間や費用不足、実践の継続の問題、学校外での環境教育の難しさなどがある。現在の教科教育の上に、環境教育を上乗せしようとしていることから生じる問題が大きいといえる。また、理念と実践が異なる方向性を持ってしまっている学校も見受けられた。環境教育カリキュラムを取り入れるため、それが環境に対する関心や態度、あるいは環境に対する感受性などいった子どもの成長に与える影響を評価する必要がある。

「感想」

環境教育は地域性や教師や学校側の事情があるため、全国共通の教育カリキュラムとして定着しないから、環境教育が発展しないと感じた。Moribitoの活動では、地域性を組み込み、持続的な環境学習活動を目指す。そして、多くの子どもたちが自然に興味を持ってほしいと感じた。現行の学校教育では難しい環境教育を、Moribitoのような外部の団体が担うことの意義を再認識した。


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