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森林における窒素成分の動態および森林管理と渓流水質

要旨

 森林は木材生産としての機能の他に土砂流出防止、水源涵養、水質浄化および野生動植物の生息地などの公益的機能がある。本稿は森林における窒素成分や硝酸性窒素が周辺の環境へ与える影響について解説している。

 森林への窒素成分の主な供給源は微生物による大気中の窒素の固定と降水である。岩坪・堤(1968)が、降雨が森林を通過し河川に流出する過程の成分濃度を調べた結果、降雨とともに森林へ供給された窒素成分は森林で変化していることが分かっている。また森林に降った雨は木々を伝わりゆっくりと地中へ流出し、河川の流量を安定に保っていることから、水源涵養が森林の重要な役割といえる。裸地に比べ適切に間伐などの手入れをされた林地の方が、雨水の浸透機能が高いこともわかっている。必要以上に伐採された林地からは、通常以上のレベルの硝酸性窒素が流出することもわかっている。またその影響はとりわけ針葉樹の林相において顕著であるとしている。

降水は渓流水となって流出するまで、様々な経路をたどるため濃度や成分は流域の特徴を反映して変化する。従って、林相、森林管理、森林に生息する動物、土壌、土壌中の動物、微生物、地形、地質の影響などが複雑に影響している。

感想

 森林は下流の水源に養分を安定的に供給することで、流域の自然環境に大きな影響を与えていることがわかった。またあまり管理されていない林地では十分に森林が機能しないこともわかった。樹木が多すぎると逆に機能が阻害されることを数値データとして知れたことは有意義だったと思える。

 私たちMoribito班は三田市の皿池湿原の森林管理から、三田市を流れる武庫川へと活動範囲を広げようとしている。森林管理は水域の環境の基盤となることを理解し、里山の森林、河川から海へと活動を展開していくことを視野に入れ、今後ますます精進していきたい。

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