「数値化できない事象の良し悪しを判断し、最適化する能力」これがくまモンをデザインし、NTTドコモのidを生みだしたグッドデザインカンパニー代表であり、また本書籍の筆者である水野学さんによる「センスのよさ」の定義である。この「センス」という言葉を私たちは日常で使う機会は少なくない。しかしその「センス」とは何か、そしてそれをどのように習得しどのように使えば良いのかを考える機会はほとんどないのではないだろうか。そしてこの「センス」というたった3文字に込められた奥深い意味合いを説いてくれる本書は私たちTSUNAGARUフェスティバル班の活動に非常に役に立つものになるとわたしは思う。
まず、大前提として知っておかなければならないことは、「センス」が後天的に身につくことであるということだ。だから天才は何もしなくても天からアイデアが降ってくるとかそういうよくある話は鵜呑みにしてはならない。筆者曰く、尖ったアイデアというものは初めから浮かぶのではなく、普通に今あるものをたくさん知ることによって「作ることのできるレパートリー」を増やし、その結果アイデアの組み合わせや「○○っぽい物」という分類を用いることで独自のアイデアにたどり着くことができるのだという。つまり今を知らずしてアイデアは生まれないということである。
また、如何にいいアイデアや商品が生まれたとしても、それが普及するまでには多大な時間がかかるので、「センスの良し悪し」がわかるのには時間がかかるということも重要だ。つまり初段階で受けが悪かったり、客足が伸びなかったりすることは良くあることであり、そこでその企画を打ち切ってしまうと本来の価値に気付けずに終わってしまうかもしれないということである。
私たちはいま激変する経済の中でよりクリエイティブな人間にならなければならない。しかしこのクリエイティブというのは別に0から1をつくることばかりではないのではないだろうか。ある市街調査では人々にまったく新しい商品(奇抜な商品)と既存の商品の改良版を見せたときにどちらの方を好印象と捉えるかという実験の結果、ほとんどの人は後者を選ぶという結果が現れている。つまり人々はより「イノベーション」に対して高い評価を与えるようである。
私たちはおそらく来年も冬の時期に同じようなイベントを主催するのだろう。今年のイベントも多くの反省点があった。これらを無碍にせずしっかりと来年にむけて準備をすることが次回のイベントをより良くするためには不可欠だ。このような試行錯誤の中で得られる確かな経験が積み重なり、わたしたちのセンスを磨き上げる。無駄なことなんて1つもないのだとこの書籍はわたしに教えてくれた。
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