紀谷 昌彦 山形 辰史 (2019)「私たちが国際協力する理由 ―人道と国益の向こう側―」
(2020年1月日本語書籍) 株式会社日本評論社
私達は、クラブサークル、地域マンション、複数の社会の構成員である。そして「宇宙船地球号」に例えられる地球の一員でもある。したがって、私達は多層な社会に囲まれ、守られ、働きかけることで生活を送っている。つまり常に助け合っていることを再認識できた。そして、その中で勝手にも自国だけの成長を考慮する大統領が台頭し、権力を維持し続けている。所謂〇〇ファーストである。しかし、このままで良いのだろうか。この自国の利益(本書では国益)と世界の国々の利益(本書では世界益)を両立できるのかという課題をどう解決していくか考えさせられた。本書で紹介されていた両立できている例としては、日本では南スーダン難民が多く流入している隣国ウガンダへ、難民への食料提供(人道支援)、難民の自立や受け入れコミュニティを支援すべく、国際機関を通じて稲作研修や職業訓練を行い、JICAも連携して技術協力を実施している。
これは難民と難民キャンプ周辺地域の住民の共存を目指すと共に、将来難民が母国に帰還してスムーズに生活を立ち上げられることも視野にいれた取り組みであった。ちなみに平和構築や紛争の再発防止にも役立つ。日本のアプローチが世界益としても、感謝されることによる日本の国益にも資するものである。
そして、もう一つ興味深いトピックがあった。それはSDGsが世界を内向きにさせてしまうことである。
MDGsは成果主義によって測られていたのに対し(目標に向かっているかモニタリングされていた)SDGsは自発的国別レビューという自発的に作成するものなので、別に途上国に支援をするコミットメントはない。目標ターゲットの多さから、全てに対応は難しい。得意なところだけ注力し、その成果を自画自賛になってしまう可能性が高い。
さらに、SDGsは数値を明示したターゲットの割合が少ない為、曖昧な達成度である。
すると、ビジネスになる目標とならない目標が選別され、結果的に世界の貧困削減より、先進国のエネルギー需要、産業 技術革新が優先される懸念があるということだ。
私の意見としては、もっと他国の現状を知ることで、自国の強みを開発途上国に活かす行動が起きる世の中にならなければならないと思う。そのためには各国々が、世界益が自国益に繋がることをもっと知らなければならない。
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