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貧乏人の経済学ーもういちど貧困問題を根っこから考える

更新日:2019年9月3日

A・V・バナジー, E・デュフロ (2012) 山形浩生訳『貧乏人の経済学ーもういちど貧困問題を根っこから考える』みすず書房


「貧困を削減する魔法の銃弾はありません」


その”魔法”を盲目的に信じている(もしくは、ファンタジーではない「リアル」を直視できない)人は、多いのではなかろうか。


本書では、アメリカの経済学者が、途上国で収集された豊富なデータをもとに、医療・食料・教育・金融など、ありとあらゆる分野の問題について論じている。


「途上国には、十分な数の学校設備が存在しない。だから、学校を建てるべきだ」

「途上国では、自作農が小作農を搾取している。だから、フェアトレードを促進すべきだ」


確かに、そうした考えには一理ある。


しかし、それだけで十分だと思っている人はいないだろうか。


上に記した事例は、途上国の貧困状況を、ごく一部しか説明できないのである。


私たち人間は、想像し、考えることができる。


実際に貧困の現場に行かなくても、十分(だとカン違いしてしまえる量)な情報が得られてしまうため、実際には到底足りない知識をもとに、途上国支援ができてしまうのだ。


重要なのは、実際に現地に行き、五感で現場を感じ取ることではないか。


それに付随して、現地で収集された(生身の人間の)データがあれば、開発支援を行う者としては、鬼に金棒(天使に弓矢というほうが適切かもしれない…)だろう。


途上国を豊かにするためには、課題が多すぎる。


「でも、貧乏な人の生活を改善する方法については、まちがいなく色々わかっています」


錬金術にいそしむのではなく、情報収集を自ら行い、足を運ぶことに躊躇しないボランティア・研究者の台頭が、貧困問題の解決においては望ましいだろう。





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